Sheepdog Trial

〜 はじめに 〜


このルールブックは、日本で開催されるトライアルでのジャッジの基準にする為に、International Sheep Dog Society(国際牧羊犬協会)が公開しているナショナル、及びインターナショナルトライアルのルールブックから抜粋したものです。

日本国内のシープドッグ愛好家の皆さまが、より正しい知識を得るために善意の数人のボランティアの方々によって、日本の愛好家の皆さまにも分かりやすく翻訳されました。

公開するにあたり、この翻訳されたルールブックを個人使用以外に利用される個人及び団体は、必ず事前にご連絡頂けるようお願いいたします。

無断転載を禁止します。



~シープドッグトライアルの目的~


シープドッグトライアルとは、日々の牧羊の仕事で遭遇する様々な環境下でハンドラーと犬とがチームとなって羊を的確に扱う能力を試すものである。よって、ギャザー(羊をハンドラーのもとへ連れてくるまでの一連の作業)、ドライブ(羊をハンドラーから遠ざけたり、ハンドラーから離れたところで羊を誘導する作業)、シェディング(羊の群れを分ける作業)、ペン入れ(羊を囲いに入れる作業)、そしてシングル(羊の群れから1頭だけ分ける作業)等、羊飼いが日々の仕事で必要とする全ての作業を試すことになる。

この目的は、ブリーディングとトレーニングの促進と発展、そしてより良い状態で家畜を管理するためにワーキングラインの牧羊犬の質の向上を目的とする International Sheep Dog Society(国際牧羊犬協会)の主要目的を満たすことになる。

これらのルールは協会主催のナショナル、又はインターナショナルのトライアル用に作られたものだが、ここにまとめられた原則は他の全てのシープドッグトライアルで適応されることを目的としている。

協会は共通基準を固く守り、そしてこの基準が全てのジャッジ、ハンドラーの変わることのない目標でなければならない。

一貫した共通基準を実現させるために協会、又は提携団体主催のトライアルで、ジャッジはここに収められたトライアルコースの様々な概説やルールを守らなければならない。



OUTRUN -アウトラン-


- ハンドラーは犬を送り出した時点から、ポストにとどまる。


- 犬はスタート時にハンドラー、又はポストの近くにセットされなければならない。


- 犬は左右、どちら側から送り出されても良い。


- 犬の走行ラインは直線的すぎても、膨らみすぎてもいけない。


- 犬に対し、最初のスタートコマンド(送り出し)以外のコマンドはかけてはならない。


- スタートコマンド(送り出し)以外のコマンドは減点対象となる。


- 走行途中でのコマンドのかけ直しは、一旦止まってしまってから再度コマンドをかけ直すよりも 減点が少ない。


-  コマンドをかけ直したにも関わらず犬が従わなかった場合は、再コマンドに従った犬よりも減点が多い。


- 犬はバランスポイントに到達するまでは止まってはならない。バランスポイントと言うのは、犬が羊をリフトする場所であり、羊は最初の障害物(ゲート)の方向を向いているべきである。


- アウトランの途中で完全に止まってしまった犬は、コマンドをかけ直した後続行した犬よりも 明らかに問題は深刻であり、ジャッジはそのように点数をつけなければならない。


- 犬は羊に突っ込むような行為をしてはいけない。


- 良いアウトランの形というのは、洋梨を半分に切った片側の形。場所的にはフィールドの一番奥で、その洋梨の頂点は尖っているのではなく、丸みを帯びていて、丸みを帯びた頂点が羊に近い位置に来るのが良い。


- 犬は羊に影響を与えないように、十分羊から離れた位置でアウトランを終えなければならない。


- アウトランの途中で犬がフィールドを横切ってしまった場合、アウトランで得られる総合得点の最低でも80%は減点されなければならない。加えて、コマンドをかけた分全てが減点されなければならない。


- 完璧なアウトランとは、コマンド無しで完結されなければならず、ジャッジは発せられたコマンド毎に減点しなければならない。減点数はジャッジが失敗をどれだけ深刻に見るかにより決まる。


- アウトランの終了地点は羊の実際の位置によって変わる。犬が到達する前にもし羊が置かれた場所から動いてしまっていた場合、アウトランの終了地点は犬が羊を最初の障害物(ゲート)へ 直線的に連れて行けるような位置で終わらなければならない。もし羊が最初の障害物へ向かって進んでしまっていたなら、犬は必然的にアウトランのラインから外れた場所で止まらなければならいかもしれない。逆に羊が置かれた場所から最初の障害物とは反対方向に動いてしまっていた場合、犬はフィールドのより奥まで走っていかなければならない。 



Lift - リフト -


- アウトランの終了地点で、犬は完全に停止しても単にスピードを弱めても良い。


- 犬が羊に接近する際には、スムーズに注意深く、落ち着いた態度でなければならない。


- 犬は毅然とした、しかも静粛な態度で羊を制御しなければならない。


- 犬は羊に突進して驚かせることも、羊を動かす前に躊躇して再コマンドを必要とすることもしてはいけない。


- リフトは羊が最初の障害物(ゲート)の方向へ動いて行ける位置でスムーズでバランスが取れていなければならない。


- ジャッジは自身の羊やシープドッグに関する知識を活用し、リフトした際に羊が過度に乱されていないかを判断し、その判断に応じて点数をつけるべきである。


- ジャッジはトライアルのこの時点で、過度なコマンドや時間のかかりすぎ等の減点をする。



Fetch-フェッチ-


- 羊はリフトされた場所から最初の障害物(ゲート)に向けて直線的なラインを一定のペースで運ばれなければならない。そして最初の障害物の後、また直線的なラインで次にハンドラー、又はポストまで運ばれなければならない。羊がそのラインから外れてしまったら、速やかにそのラインに戻さなければならない。


- 犬は急ぎすぎてもフランクし過ぎてもいけない。(例えば、犬は羊の両側に大きくフランクし過ぎて、その結果、羊を直線的ではなくコース上を横切るようなジグザグに動かしてはならない)


- 犬は最低限のコマンドしか必要とせず、正しいラインから外れてしまった羊に対しての制御能力、そして全てのコマンドに対しての即応能力が審査される。


- ゲートでのリトライは許されない。


- ゲートを通すのを失敗し、羊がコースから外れてしまった場合、ペナルティーは全ての状況を反映させなければならない。特に、減点の理由がハンドラーによるものなのか、又は犬によるものなのか。それとも両者によるものなのかを詳細に反映させなければならない。両者(ハンドラー&犬)共にペナルティーの対象となる。羊が扱いにくく、そのためにコースを外して(迂回)しまった場合、これは犬にとっては避けようもない事なので、扱いやすい羊で失敗した場合の方がペナルティーはより厳しく課せられるべきである。


- ゲートを通すのを失敗した場合、羊1頭につき最低1点の減点対象となるが、ジャッジは失敗の原因となった全ての状況を考慮し、その状況に従って減点数を調整すべきである。


- トライアル委員会の指示がなければ、ハンドラーはフェッチの最後に羊をポストの周り、又はハンドラーの後ろのできるだけ近い位置を通過させなければならない。全ての作業は落ち着いた動きでスムーズでなければならない。



Driving - ドライブ -


- ドライブはコースにより、又はトライアル委員会の決定に従って、左から右、もしくは右から左へ走る事ができる。


- ドライブの最初の行程は羊がハンドラー、又はポストの後ろを通過したら直ちに開始する。


- 羊を最初のゲートに通した後、次に羊をすぐに次のゲートへ、フィールドを横切りながら真っ直ぐ向かわせなければならない。次のゲートを通過したらターンさせ、シェディングリンクに向かって可能な限り綺麗な直線的なライン上を歩かせなければならない。


- ドライブの最後の行程はシェディングリンクへ直線的なラインで向かっていなければならない。シェディングリンクは通常、直線的なラインでドライブしてこれるような位置に設置される。


- 犬は過剰なコマンド無しで安定してドライブ出来る能力を示さなければならない。


- 羊は障害間を直線的なラインで進んで行き、ゲートとポストの両方で無理なくターンさせられなければならない。もし羊がそのラインから外れてしまったら、可能な限り迅速に直線的なラインに戻さなければならない。


- フェッチの時と同様、ゲートは通過させなければいけない障害ではあるが、通過させることにより、羊を一旦まとめてくれる障害でもある。


- ドライブ全体を通して羊は穏やかに動かさなければならない。急にスピードをあげ、その後停止させたりは望ましくなく、減点対象とされるべきである。


- ゲートを通過させるのを失敗した場合、羊1頭につき最低1ポイントの減点となるが、ジャッジはゲートを失敗した理由につながる全ての状況を考慮に入れて、減点数を調整すべきである。


- ゲートでの再試行は許されない。


- ハンドラーは最初の羊がシェディングリンクに入るまでポストに留まっていなければならない。


-ドライブは全ての羊がシェディングリンクに入った時点で終了となる。




Shedding - シェディング -


- リンク内で2頭の色付けされていない羊が他の羊から分けられなければならない。


- シェディングは、2頭の指定された羊を、犬がよりスムーズに分けられる最適な位置に持っていけるよう、リンク内でハンドラーと犬による羊との駆け引きが必要とされる。


- ジャッジに申し分のないシェディングの完了とみなされるために、犬はリンク内で2頭の色付けされていない羊を他の羊から分ける事が求められ、リンク内、もしくはリンク外でも羊をコントロールしなければならない。


- ここでの重要な点は、群れの中から2頭の色付けされていない羊を分ける犬の能力を試す事である。


- 犬が羊を分ける際に、羊の間をまっすぐハンドラーに向かって入ってくる必要はない。


- 犬はシェディングして分けた羊を他の羊から離してホールド出来る力を示さなければならない。羊をそこからドライブして離す必要はない。



Penning - ペン入れ -



- シェディング完了後、犬は全ての羊をまとめる。その作業はリンク内で行われる必要はないが、効率的で手際よく行わなければならない。その後ハンドラーは羊をペンに入れるために犬をその場に置き、自身はペンの方に進んで行く。


- 犬がシェディングリンクからペンに羊をドライブするのをハンドラーが手助けすることは禁止とする。


- ハンドラーはロープを持ってペンの入り口に立つが、シェディングのやり直しが必要な場合以外はロープから手を離してはならない。


- ペン入れを成功させるために、巧みに羊をコントロールし必要なポジションへと動かすのはハンドラーではなく、犬の仕事(役割)である。


- ハンドラーは羊をペンに誘導するためにゲート(ペンの扉)を使ってはならないし、ゲートで羊に触れてもいけない。そのような行為は減点対象となる。


- ハンドラーは羊をペンから出す前に、制限時間内に一旦ゲートを閉じなければならない。


- 羊をペンから出した後、ハンドラーはゲートを紐等でくくり、しっかり閉じなければならない。閉じられなかった場合は減点対象となる。



Single - シングル -


- シングルの採点は羊がペンを離れた時点からすぐ開始される。


- ハンドラーはその場に犬を置き、自身はシェディングリンクへと向かう。犬はその後ペンからシェディングリンクへと羊を移動させる。


- 色付けされた2頭の羊のうち1頭がリンク内で分けられ、その後リンク内外でジャッジが納得いくまで他の羊から離して犬がバランスを取り、その状態をキープする。


- ハンドラーは犬が1頭分けた羊をドライブするのを補助することや、どんな距離であろうと自身がドライブを試みること、又犬に強制することも禁じられている。


- シングルは、犬が分けた1頭の羊をジャッジが納得いくまで他の羊から離してキープした段階で終了する。 ジャッジはシングルの終了をハンドラーに分かるように合図すべきである。


- シェディングと同様に、ハンドラーでなく犬が1頭の羊を分けなければならない。


- 犬が躊躇してしまい、見ているだけで積極的に作業しない場合に多くのハンドラーが自身で羊を分けている行為がよく見受けられるが、これは減点対象とされなければならない。


- ハンドラーは犬が羊を1頭分け、バランスを取るために左右に動く際に能力を十分発揮できるように、邪魔にならないよう作業できるスペースを空けてあげること。


- 犬が他の群れから1頭の羊を分けた状態をキープできる事が重要である。ジャッジは犬がその能力を十分証明できるまで終了の合図を出してはいけない。


- シングルが効率的に完了したかどうかを決める際には、ジャッジは羊の状態も考慮に入れるべきである。



Scale of Points - 各カテゴリーの配点 -


どの行程においても、制限時間内に完了できなかった作業に対してはポイントは与えられない。


アウトラン : 20ポイント

リフト   : 10ポイント

フェッチ  : 20ポイント

ドライブ  : 30ポイント

シェディング: 10ポイント

ペン    : 10ポイント

シングル  : 10ポイント

               合計 :110ポイント